セックスレスに陥ってしまった夫婦は、果たしてセックスレス状態を解消することはできるのでしょうか?
前回の記事では、日本のセックスレス夫婦は、統計調査データよりも多く、実際のところは60%程度は存在するということを紹介しました。
世界を見回しても、日本の夫婦のセックスレス比率は圧倒的に高いわけですよね。
では何故、日本ではここまでセックスレス夫婦が多いのでしょうか。
まずは、セックスレスに陥りやすいのは、日本的な家庭文化にその要因があるという面について見ていきたいと思います。
前回に引き続き、社会学者・宮台真司さんの見解を参考にしてみましょう。
アメリカやヨーロッパ、特にアングロサクソンのアメリカとイギリスでは、夫婦中心主義があります。
「夜9時以降は子供の時間じゃありません」と無理矢理に子供を寝かせて、「夫婦の寝室に絶対に入っちゃいけません」と言い渡すのです。
子供をベイビーシッターに預けてパーティに出かけたりもします。
要は「子供を隔離して、何とかして夫婦の空間と時間を作る」のです。
日本にはそういう伝統がないので、核家族化が、夫婦中心主義ならぬ、子供中心主義でなされたわけです。
なるほど、まさにそのとおりですよね。
日本で最も有名な民俗学者・柳田國男が日本の地域社会の特徴として見出したのが、「子供中心主義」ということのようです。
アングロサクソンみたいに厳しく躾けるのでなく、日本の場合はおじいちゃん・おばあちゃんが大事に甘やかして育てます。
そのような伝統が現在の核家族化に引き継がれ、今でも大概の家庭では、夫婦だけの時空間を作るどころか家庭は子供中心であり、いつも「子供まみれ」の状態であるわけですね。
そのような「子供まみれ」の家庭環境であっても、最初のうちは何とか僅かな隙間時間を見つけて、例え慌ただしくともセックスしようとするわけです。
でも、徐々にそのような情熱も消滅していき、家庭からは性的要素が皆無となり、子供中心の、子供を育てるだけの空間になってしまうわけですね。
夫婦仲は別に悪くはないけど、いつの間にかセックスレスになってしまい、その状態がズルズルと続いている、そんな夫婦も多いと思います。
そして一度セックスレスになってしまえば、なかなかセックスするきっかけが掴めなかったりするんですよね。
ただ、そのようなそこまで深刻ではないセックスレス夫婦の場合は、環境を意図的に変化させることで、セックスレスは解消されるかもしれません。
どのような工夫をすればよいのか、宮台真司さんは実際に自分がどのようなことをしているのか、具体的な例を挙げています。
僕たち夫婦は、毎月カレンダー上に「夫婦の日」を書き入れ、かなり前から保育所や親族に子供たちを預ける手配をして、独身時代の休日みたいに朝からデートします。
一緒に映画を見に出かけたり、二人の思い出の場所に出かけたり。
天気が悪ければ、DVDやブルーレイを見たり、とっておきのランチを僕が作ったり。
そうやって夫婦の時空間を作って、デートをした上で、ちゃんとセックスする。
自ら意図して環境を変化させないと、「子供まみれ」の状態は常態化し、簡単にセックスレス状態に陥ってしまうわけですね。
これがセックスレスを解消する処方箋だというわけです。
出会った頃のような、結婚する前のような、そんなデートを再現しよう、ということですよね。
そのようなデートをして、日常を忘れて非日常に浸るができれば、自然と濃密なセックスへと発展していくということですね。
まだ普通に日常的に会話があるような、そんな夫婦であれば、このような努力を少ししてみることで、状況は改善されそうですよね。
一日デートするのが難しければ、休日前などの夜、子供を寝かしつけた後に少し一緒にお酒を飲むとか、そんな簡単な事から始めてみてもいいかもしれないですよね。
とにかくセックスレス解消のキーワードは、『日常と隔離された非日常性の時空の演出』です。
ただ、深刻なのは、そのように二人で過ごしたいという気持ちを、一方が既に持っていないというような夫婦ですよね。
そのような場合はセックスレスの解消は非常に困難かもしれません。
その点についてはまた改めて考えてみたいと思います。