ポリアモリー

前回からの続きです。

お互いの気持ち、そして普段は心の奥底に秘めていて決して誰にも言わないような事を曝け出したおかげで、二人の関係性は確実に新たなステージに到達したように感じました。

もちろん全てをすんなり受け入れられるわけではありません。

でも、どうしようもない欲望を抱えながら、それでもその欲望に振り回されて大切な関係を簡単にぶち壊したりだけはしないように、お互いに精神的に成長したように思えます。

もちろんそれが成長なのかどうなのかはよく分からないという部分もありますが。

ポリアモリー 複数の愛を生きる

以前、「ポリアモリー 複数の愛を生きる」という本を読みました。

ポリアモリー 複数の愛を生きる

とても興味深い本でした。

ポリアモリー」というのは普段聞き慣れない言葉ですが、直訳すると「複数愛」ということなんだと思います。

「不倫とも浮気とも違う多様な愛のかたち」
「誠実に複数の人を愛するということ」

というような考え方が「ポリアモリー」と呼ばれていて、今アメリカでかなり注目を集めているようなんです。

私達は普段の生活の中で、「一対一」という恋愛スタイルに全く疑問を抱かずに、それが当たり前であると無条件に考えて生きているわけです。

でもそれは本当に絶対的なものなのか。そうじゃないんじゃないか。

本気で複数のひとを愛するというも十分にあり得ることで、それは素晴らしいことなんじゃないか。

そのようなライフスタイル「ポリアモリー(複数愛)」を生きる人々がアメリカではかなり増えているようなんです。

この本の著者は「性愛論」「家族研究」を専門にしている研究者で、実際にポリアモリーという考え方を実践しているアメリカの知人と共に生活をして、ポリアモリーとは実際にどのようなものなのか、肌で感じた事を報告しているという本でもあります。

愛というものは、間違いなく人の人生を豊かにする

そうであるならば、男女の一対一の愛(モノガミー)だけでなく、さらに、合意にもとづく男女の複数愛の形(ポリアモリー)があってもよいのではないか。

このような問題意識があって、著者はポリアモリーに興味を持ち、深く調査する動機となったようです。

ポリアモリーは浮気とは違う?

ポリアモリーと浮気

ポリアモリーは、浮気や二股や不倫とはちょっと違います。

関係を持っている相手には、すべての関係をオープンにするという原則があるのです。

もし黙っているならば、それは不誠実なモノガミー(1対1の関係が正しいとする人)ということになります。

ポリアモリーにもっとも必要なものは何かと聞いてみると、「理性」「知性」「コミュニケーション能力」という答えが返ってくるようです。

ここから分かるのは、ポリアモリーは、ただ単純なセックス目当てのスワッピング(夫婦交換)とは違って、信頼できる相手と長続きする「愛の形」を希求するものであるということですね。

スワッピングについて深く論じた記事はこちら

ポリアモリーと嫉妬という感情

もちろん、そのように言うのは簡単ですが、ポリアモリーにとって重要な試練は「嫉妬」の感情であるわけです。

自分の大切な人が、自分以外の人も愛しているという事を受け入れないといけないわけですから。

彼らは嫉妬を、善であるとも悪であるとも単純にみなさずに、パートナーたちとの関係をより良いものにしていくために「よりよく活用すべきもの」と捉えているようです。(文化人類学の研究では、「嫉妬」の感情というのは、ヒトという生物に普遍的なものではなく、文化的・社会的に構築された感情であるということのようです。)

ポリアモリーを現代社会で実践することの困難

もちろん現代社会は、モノガミーが支配的なので、当然このような考え方には風当たりがとても強く、ポリアモリーを実践する人々は、きわめて繊細な他者への気遣いと気配りをしながら生きているようです。

彼らは、自分が傷つくことや、他者を傷つけることに、モノガミーの人々よりずっと鋭敏だということのようです。

「家族」は、モノガミーには自明な所与のものであるのに対して、ポリアモリーにとっての「家族」は多様な在り方をするので、意識して注意深く作っていかなければならない、ということになるわけです。


一対一を越える愛という形で他者を受入れ、他者と共生するということは、私達の生を豊かにする何かがあるように思います。

ポリアモリーについて奥さんと語り合う

この本を奥さんにも読んでもらって、「ポリアモリー」という考え方について色々と話し合いました。

お互いに、「ポリアモリー」という考え方をそのまま受け入れてやっていけるということではありません。


深く納得できる部分と、やっぱり違和感が残るという部分があります。

でもこのような考え方は、僕たち夫婦のこれからの生き方に間違いなく大きな示唆を与えてくれました。

奥さんは、彼の事を純粋に深く愛していました

そして色んな苦悩も伴いましたが、間違いなく人生を豊かにしたと思います。

奥さんの友達に対する接し方、子供に対する接し方を見ていると、以前よりは間違いなく色んな考え方を受け入れる許容度が広がっているし、大らかになっています。

そしてそれは彼女の人間的な魅力が大きく増したということに繋がっています。

例えば今、奥さんが彼を連れてきて、ポリアモリーを実践したいと言われたら、さて僕はどうするのか、よく分かりません(笑)


ただ、お互いに愛し合っていても、他の人を愛する可能性は十分にある、そしてそれは色んな条件が重ねれば自然なことでもあり、その感情自体はお互いに受け入れるという段階では間違いなく合意しています。


『ポリアモリー 複数の愛を生きる』著者・深海菊絵さんインタビュー

ポリアモリー(Wikipedia)